限界道中いざ月へ

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【マリオ映画】「運命のくじ引き」って英語でなんて言う? 原語版と吹き替え版で比べるルイージのジョークについて

2023年は名作映画が大量だったイメージがあるのですが、個人的に大賞を与えたいのが『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』である。

筆者のTwitterを見ている方なら知っていると思うが、5月は本当に、気が狂うほど観に行った。つらい5月を支えてくれた映画だった。

vert.hatenablog.jp

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気が狂った筆者の感想はこちら。

 

さて、2023年12月30日から、この映画マリオがAmazon Prime見放題に仲間入りした。

けっこうなロングラン上映だったから、一度観た方も多いだろうし、なんやかんや観に行けなかった方も、年末年始でぜひ観てほしい。ぜったいに、めちゃくちゃ、面白いから大丈夫!!!

で、Amazon Primeの配信をきっかけに、記事を書こう書こうと思って忘れてたことを思い出した。

以下、映画本編の若干のネタバレがあるので、まだ映画を観ていない方はぜひ先に視聴を済ませてね。

 

はじめに:ルイージのジョーク、英語だとどんな感じ?

映画を観た方なら覚えてるかと思う。冒頭、家族から馬鹿にされ落ち込んでいるマリオの部屋にルイージがやって来て、下水事故のニュースを見るシーン。

場所がブルックリンと知るや、マリオがそこへと駆け付けるためにルイージに声をかけるところの台詞がこちら。

マリオ: ルイージ、僕らの出番だよ! 運命の導きだ!

ルイージ:運命のくじ引きって…外れそう。

マリオ: どんな耳してんだよ。いいから行くぞ!

愛すべきルイージのおとぼけシーンですね。

「みちびき」と「くじびき」で洒落にしてるのは、わかる。だって日本人だもん。

でもこれ、原語版(英語版)だとどういう台詞になってるんだ?? と思って、上映数の極端に少ない字幕版を観に行った。

字幕版は字幕版でドチャクソに良かったんだけど、それは前掲の感想記事を見てもらうとして。

字幕版は英語音声に日本語の字幕。つまりキャラクターが発している英語台詞を忠実に表示しているわけではない。

で、記憶が正しければ、たぶん日本語字幕も「運命のくじ引き」と書いていた。

ただし耳から入ってくる英語は、どう聞いてもくじ引き(lottery)とは言ってない。

なんか… high school???とかなんとか聞こえた。いやほんとに!!!ハイスクールは本当に聞こえた!!

その後のマリオは「What?」と言っているようだったので、日本語版と同じく、ルイージが頓珍漢な答えを返したことだけはわかる。

2回通ってもルイージが何を言っているか聞こえなかったので、Tumblrで海外ニキネキに聞いてみた。

するとなんか、面白い文化の違いに発展したので、以下 Tumblrで得た見識を紹介する。

 

 

運命のくじ引き編

さてこの運命のくじ引き、Tumblrで識者に助けを求めると、海外ニキネキたちがDMを送ってくれた。

…が、割とみんな何を言っているのか意見が分かれている。

 

映画館でリスニング

兄弟がブルックリンでの洪水のニュースを見ているときに、マリオが「Destiny is calling!」と言った後、ルイージがなんて言ってんのかわかんないよ……なんか…高校(high school)?? 海外ニキネキ教えて~😢😢

という筆者の舐め腐ったポストに、何通かメッセージが届いた。ありがたいこっちゃ。

その中で、映画に何度か通ったらしいアメリカ在住ネキの意見がこちら。

  1. ルイージは「Destiny Del Macchio(あるいはVecchio)」と言っているのではないか
  2. 正確には聞き取れなかったが、このMacchio/Vecchioはラストネームである
  3. ルイージはマリオの言ったこと(Destiny is calling)を、文字通り「Destiny」さんが呼んでいる、と捉えたので、マリオを困惑させた

へ…へええ~~~!?!?!? 人名! そりゃ聞き取れねえわ!

ということは、「from high school」というのがくっつくと「高校で知り合ったDestinyさん」ということに…なる…のか!?!?(自信がない)

ネキ曰く、Destinyというのは主に女の子の名前、特に黒人の女の子につけられる名前であるそう。

ということは日本語に直訳すると、

「ルイージ、行こう! 運命(Destiny)が僕らを呼んでる!」

「運命(Destiny)さんが呼んでるって? あの…高校で知り合ったあの子??」

「何言ってんだ、いいから行くぞ!」

みたいな、そういう、ニュアンスに……??アンジャッシュかな

というか、私が理解できなかったように、日本人はDestinyが人名かどうかなんてわかんないから、字幕版はより分かりやすい韻になったのね。

翻訳って…すげ~~!! そんでこの知見が得られるインターネットもすげえ!

 

海外ネキに「運命のくじ引き」について教える

Destinyさんのことを教えてくれたアメリカネキは、いつか日本に留学したいと考えているらしく、「日本語版だとそこの台詞どうなってるの?」と尋ねてきた。

よ~しお礼に教えちゃうぞ! と張り切ったんだけど、

  1. まず日本語版での会話の意味を英語に訳する
  2. 英語直訳では完全に意味が分からないので、日本語の「音」を教え、対応する意味を教える
  3. 「韻」の概念を教えて、「みちびき」と「くじびき」で何が洒落になっているのかを教える
  4. 1~3を全部英語で伝える

これ……めっちゃ大変では!?!?!? はい 大変でした

まず自分の英訳が正しく伝わってるのかも怪しいもんね

以下クソ恥ずかしいんですが、筆者の無能英語をご笑覧ください。

 

まずは兄弟の会話の日本語版の意味を、そのまま英語に直してみる。

M: (watching tv) This is it! Luigi, this is the chance. Destiny is leading us!
L:  Destiny’s lottery? Ugh, we may not win, I think…
M: What did you listen, huh? C’mon! (Leave the room with Luigi)

で、日本語では何が起こっているのかを相手に伝える。

“Destiny is leading us” Mario said, in reality, he said “Unmei no Michibiki da! (運命の導きだ!) “
“unmei” (um-mei) means “destiny”.
“michibiki” means “leading someone” .
For example, “God leads us” has similar meaning🤔

Then, Luigi spoke about lottery.
In Japanese, he said
“Unmei no Kujibiki tte… hazuresou”
(運命のくじ引きって……外れそう)
As you think, “kujibiki” means “lottery”.

最後に、韻を踏んでいることを…伝える…!

You will find that “michibiki” and “kujibiki” end by the same sound, “-ibiki”
This is the joke using these sounds.

Of course, what Luigi said is not relevant to Mario’s words. So Mario was confused.

文法がボロボロなのは本当に許してください……

伝わればヨシ! ということで、海外ネキにはどうにか言いたいことは伝わった…と思う。

一点、私はくじ引きを「lottery」と訳したんだけれど、海外ネキは「それは『宝くじ』という意味? それともシノニムなのかな」と言った。

これはちょっと…上手く説明できませんでした 普通のくじ(普通ってなんだろね?)ってraffleなのかな? 詳しい人教えてください

And also, as you said, lottery was 宝くじ.
Lottery(or raffles? IDK which word is better…) are all about luck,
but it sounded to him like Mario said, "Lottery of Destiny (運命のくじ引き)," so Luigi felt like Mario was overreacting and said, "We may not win" . …Probably.
What matters is the sound of "michibiki" and "kujibiki".

この必死こいた返答よ。

語学は日ごろから鍛えないとだめですね…

 

実はこの後、このルイージの小ボケについての議論が思わぬ方向に発展していって、海外の方の視点と、自分自身の感じ方の違いに大いに考えさせられた出来事があった。

直接 日本語/英語の問題からは外れるのと、なかなかデリケートな話題でもあるので、これについてはいずれ機会があれば別記事を用意できたらいいな。

 

アマプラで答え合わせ

そんなこんなですっかりこのネタを理解した気になっていたのだが、

アマプラで配信ということは、英語も日本語も字幕見れるやん!!!

というわけで答え合わせをしてきた。今更。

日本語版がこちら(再掲)。

マリオ: ルイージ、僕らの出番だよ! 運命の導きだ!

ルイージ:運命のくじ引きって…外れそう。

マリオ: どんな耳してんだよ。いいから行くぞ!

これが、原語版(英語)の英字幕だと、こうでした。

Mario: Luigi, this is our chance. Destiny is calling!

Luigi:   Destiny Del Vecchio from high school?

Mario:  What? No. Just come on!

あ、アメリカネキ正解してる!

ということは、やはりこのDestiny Del Vecchioさんという人名とかけたジョークだったんだな。

……誰?

ひととおり検索してみても、けっこう海外勢も「Desteny Del Vecchioって誰??」になっているらしい。

ということはDestinyさんにモデルがいるわけじゃなくて、ルイージの小ボケ(本人はいたって真面目なんだけど)だったみたい。

 

ちなみに:Del Vecchioについて

じゃあDel Vecchioってどういう姓なんだろうと調べてみたら、どうもイタリア由来のお名前みたい。

vecchioには伊語で「古い」という意味があるようだし、Del Vecchio(デル・ヴェッキオ)で姓になる。他にも「Del-」や「De-」のように、前置詞(?)が付く姓も多いみたい。へえ~

有名人はいるかな?と調べてみると、

世界的眼鏡ブランドのルックスオティカ(Luxuottica)の創業者レオナルド・デル・ヴェッキオや、

アメリカのアパレルブランド ブルックスブラザーズ(Brooks Brothers)のCEOクラウディオ・デル・ヴェッキオがいました。

 

イタリア由来のお名前なら 兄弟のジョークに出てきたのはめっちゃ納得。

マリオは当初イタリア系の移民という設定があって、映画でもその背景は丁寧に拾われてるので(家族のイントネーションとか、食生活とか、いろいろ!)、

たまたまかもしれないけれど、こういった小ネタからもそれが推しはかれるのは素敵。

他にもこのDestiny Del Vecchioさんについて何かご存知の方がいたら教えてくれ~!

 

それはそれとしてこの「Destiny Del Vecchio from high school?」は、なんか海外勢ではmeme化してるっぽいね。

 

やるときは やルイージ編

マリオ映画の公開当時、筆者が頭を捻ったルイージジョークがもうひとつある。

ダークランドに落ちたルイージがカロンを蹴っ飛ばして、「やるときは、やルイージさ!」と言い放つシーン。

やルイージって……原語版で何?

 

続・映画館でリスニング

さっきのDestinyさんの下りと同時に、当該シーンを字幕版で見てみた。

すると、どうもなんか、Luigiみたいな音は聞こえる。

というわけで、またTumblrで海外勢に聞いてみた。

英字幕版を観に行ったとき、ルイージが「You just got, a-Luigi'd!」とか、「You just got ha-Luigi'd!」と言ったように聞こえたんだけど、

誰か この英台詞に何が起こってるのか教えてください!😢

(当時のTumblr)

 

実は時系列的には、この「やるときは、やルイージさ!」について聞いたのが先で、後から「運命の導き」をアメリカネキと議論していた。

Tumblrでは、日本語版の台詞を先んじて海外ニキネキに紹介もした。

Yaru toki wa yaru (やるときは やる) means,

“He can get things done when he has to do”.

Japanese do not distinguish between sounds of R and L.

So for us, “ru” sound of “yaru” and “lu” sound of “Luigi” is the same.

Luigi puts the two together and jokes about it by saying “ya-Luigi”.

The meaning of the JP version of this dialogue goes like this.

“I, Luigi, am a guy who does things when I have to do! “

《訳》
「やるときはやる」という日本語は、「(誰かが、そうは見えなくても)必要な時にそれをやることができる」といったニュアンスがある。
日本人はRの発音とLの発音を文字の上で区別しないから、
我々にとって「やる」の「る」と、「ルイージ」の「る」はほぼ同じ。
このときのルイージは、この2つの語をくっつけて「やルイージ」といってジョークを言ってるんだよ。かわいいね。

これを見た親切海外ニキネキが、また丁寧に教えてくれました。ありがてえ~

 

海外勢の解説① 用途不明の「a」の正体

これね、こっちは凄くいろんな知見が集まった!

英字幕を確認したけど、「You just got a-luigi'd」と言ってるね。
思うに、カロンを(一時的だけど)やっつけたのに安心してるのと、未知の場所で怖い思いをしている中で 自分を励ますためにそうしてるんだと思うよ。

 

これはまさにルイージのイタリア訛りが出ているところだよ!
イタリア人の英語は、「a」の音が凄く強調されるんだ。たとえば「pasta」を「pahstah」という感じに言う。映画の兄弟の発音は全てこんな感じだよ。
ルイージの「You just got a-luigi'd」の「a」の正体はこれだね。
つまり、マリオが「Let's go!」を「Let's-a-go!(レッツァ・ゴー)」と言うのと同じ!

はえええ~~~~~!! ここもイタリア訛り由来の台詞なのか!

マリオの「レッツァ・ゴー」は日本人にも耳に馴染んでいて、それこそ映画冒頭でマリオがスパイクから発音を馬鹿にされてたシーンがあったよね。

当該のまってる「a」の正体はこれで納得。

 

……でもじゃあ、この「Luigi'd」って、何だろう?

海外勢のコメントの中には「名詞を動詞化して自分を鼓舞している」という指摘もあったけど、はてどういうことだろう。

頭をひねっていたら、リブログの中でとても興味深い解説があった。

 

海外勢の解説② YOU’VE JUST BEEN LOBSTERED

当該のTumblr記事はこちら

拙訳でたいへん申し訳ないのですが、以下海外ニキからご教授いただいた説明を和訳させていただきます。

こりゃ興味深い! 日本語版が適切なダジャレになってるのが良いね。
英語版に関して言うとすれば……うーん、まあ、英語にはしょうもないジョークがある。
つまり、誰かを不意に驚かせようとするとき、意味もなく名詞をもってきて、それを動詞化するんだ。

 

これの例を2つ挙げるね。

まずこういう動画がある。「You just got Franced」

www.youtube.com

あとこれ。「You've been gnomed」

www.youtube.com

でもインターネットには、他にもこういうジョークが山ほど転がってるよ。どれも等しく無意味でしょうもないけどね!

当該Tumblr記事より孫引き

だから、ルイージが「You just got a-Luigi'd」と言ったのは、
カロンが突然ルイージにやられたのを、ルイージがおどけて表現したかんじになるね。

これは……うんまあ……馬鹿げてはいるんだけど、でも愛嬌があるよね。

うわー!! これはすごい! 独力の勉強では絶対知らなかったと思う!

試しにGoogle検索に「You've just...」で入力したら、既に予測候補がめちゃくちゃ出てきた。ということは、海外では普通の言い回しなんだな。

実際しょうもない言い方なのがミソで、日本語版も絶妙なダサさの訳に仕上がってるのは素晴らしい。翻訳家ってすごいなあ。

ということは、英語版ルイージは「ルイージにしてやられたな!」みたいな感じで言ってたのね!

推しの解像度が上がるのすっごく嬉しい!

 

おわりに

そんなわけで、推しのジョークを英語で理解しようとしたら思わぬ勉強に繋がったという話でした。

やっぱり言語は暮らしとか慣れとか文化が関わってくるから、ただテキスト眺めて勉強するのじゃどうにもならんね~

でもネットのおかげで現地民の知見が伺えてありがたかった!

アマプラ神が見放題にしてくれたので、あらためて原語版見るぞ!!

 

みんなも2023年ベスト映画ぜったい見てくれよな!!!!!!